相続土地国庫帰属制度の概要と創設の背景
相続土地国庫帰属制度は、相続や相続人への遺贈によって取得した相続土地について、一定の条件を満たせば国に所有権を引き渡せる制度です。
参考:https://www.moj.go.jp/content/001390195.pdf
空き家や使わない山林、遠方の土地などを相続した結果、固定資産税だけ払い続けている所有者不明土地予備軍が全国で増えています。管理されない老朽化空き家や放置土地は、防災・景観・治安・インフラの面でも地域の大きな負担になっています。
相続土地国庫帰属制度は、こうした問題を背景に「いらない土地を手放したい相続人」と「所有者不明土地を減らしたい国・自治体」の双方のニーズに応える仕組みとして創設されました。相続放棄と通常の売却のあいだを埋める新しい選択肢といえます。
相続土地国庫帰属制度の対象者と対象となる土地
この国庫帰属制度を利用できるのは、相続または相続人への遺贈によって土地の所有権や共有持分を取得した人です。生前贈与や売買で取得した土地は対象外となる点が重要なポイントです。
対象となるのは、宅地・農地・山林・原野など幅広い相続土地です。ただし、相続土地国庫帰属制度を利用するには、法務局での審査を通過しなければならず、一定の要件を満たす必要があります。
相続土地国庫帰属制度の手続きは、おおまかに「事前相談」「承認申請」「審査」「負担金の納付」「国庫帰属」という流れになります。窓口は土地の所在を管轄する法務局で、事前相談の段階から予約制で丁寧なヒアリングが行われます。
国庫帰属できない土地の典型例と注意点
相続土地国庫帰属制度は「どんな土地でも国が引き取ってくれる制度」ではありません。一定のリスクや管理コストが高い土地は、国庫帰属の承認がされない「帰属できない土地」に該当します。
典型的なのは、次のような相続土地です。
・老朽化した空き家など建物が残っている土地
・抵当権・地上権・賃借権・地役権など他人の権利が付いている土地
・他人の通路・墓地・用水路・ため池などとして利用されている土地
・境界が不明確で、隣地との争いが生じている土地
・急傾斜地や崖地で、通常の管理に過分な費用や労力がかかる土地
・地下に産業廃棄物やコンクリートガラなどの有体物が埋まっている土地
このような「訳あり不動産」に近い条件を持つ土地は、国としても引き取った後の管理・処分が難しくなるため、相続土地国庫帰属制度では不承認になる可能性が高くなります。制度のパンフレットだけを見て「これで全部肩の荷が下りる」と考えてしまうと、後で戸惑うことになりかねません。
審査手数料と負担金──相続土地国庫帰属制度にかかる費用
相続土地国庫帰属制度の利用には「審査手数料」と「負担金」という二種類の費用が発生します。いずれも相続土地を国に引き渡す対価として、相続人が一定のコストを負担する仕組みです。
審査手数料は、土地一筆あたり一万四千円です。地目や面積に関係なく、筆数ベースで計算されます。申請書に収入印紙を貼付して納付し、申請を取り下げたり不承認となったりしても返還されません。
負担金は、承認後に納める十年分の標準的な土地管理費相当額です。宅地・田畑・山林・雑種地などの種目や、都市計画法上の市街化区域かどうか、地積の大きさなどによって算定方法が変わります。原則は一筆二十万円ですが、市街化区域内の宅地など一部の土地では、面積に応じて数十万円からそれ以上の負担金になるケースもあります。
負担金は、日本銀行や歳入代理店となる金融機関で、通知到達日の翌日から三十日以内に納付する必要があります。この期限までに納付されないと国庫帰属の承認は失効し、相続土地の所有者としての義務は継続します。
相続放棄・売却・寄附との違いとメリット・デメリット
相続土地国庫帰属制度は、相続した土地を手放すための選択肢の一つにすぎません。実務上は「相続放棄」「売却・贈与・寄附」と比較しながら検討することが欠かせません。
相続放棄は、被相続人の権利義務を一切引き継がない手続きです。相続土地の負担からは解放されますが、預貯金や有価証券などプラスの財産も含めてすべて放棄することになります。また、原則として相続開始を知った日から三か月以内という期限の制約があり、時間的な余裕がありません。
売却や贈与・寄附は、相続土地を第三者や自治体などに引き渡す方法です。ただし、買主や受け手を見つける必要があり、再建築不可の土地や共有持分、接道条件が悪い土地、老朽化した空き家付き土地などは、そもそも市場での出口が見つからないケースも少なくありません。
相続土地国庫帰属制度は、相続放棄のように全財産を手放さなくても、特定の土地だけを国に引き渡せる点がメリットです。一方で、審査手数料と負担金というコストが発生し、国庫帰属できない土地も多いというデメリットもあります。相続土地の立地・状態・権利関係を踏まえて、複数の手段を組み合わせる視点が重要です。
株式会社SAの視点:制度だけでは救えない「訳あり不動産」の現実
株式会社SAは、共有名義・再建築不可・底地・立退き困難・境界未確定・違法増築の疑いなど、いわゆる訳あり不動産の買取と再生を専門とする不動産会社です。
相続土地国庫帰属制度の要件を見ると、実務で「相談が最も多い土地」ほど国庫帰属から外れやすい構造になっていることが分かります。老朽化空き家が残る土地、権利関係が複雑な土地、近隣トラブルを抱えた土地、崖地や擁壁を含む土地などは、まさにSAが日々向き合っている訳あり不動産そのものです。
国としては、災害リスクや環境リスクの高い土地、除去費用が高額な埋設物を含む土地などまで無条件に引き取ることはできません。その結果、相続土地国庫帰属制度の「外側」にこぼれ落ちる土地こそが、個人オーナーにとって最も負担の大きい相続土地になりがちです。
SAは、不動産鑑定士・宅地建物取引士・弁護士・司法書士・測量士などの専門家とチームを組み、権利調整や測量・登記の整理、長期的な出口戦略の設計を行うことで、こうした訳あり不動産の買取・再生を現実的な選択肢にしてきました。相続土地国庫帰属制度がカバーしきれない領域を、民間の専門プレーヤーとして補完しているのがSAの役割です。
相続土地国庫帰属制度と株式会社SAをどう使い分けるか
これからの相続土地対策では、「一つの制度だけで解決しようとしない」発想が重要です。国庫帰属制度・売却・相続放棄・遺言・生前対策などを組み合わせて、家族と不動産の将来像をデザインすることがポイントになります。
例えば、次のような組み合わせが考えられます。
・建物を解体し、権利関係を整理すれば国庫帰属できる土地は制度を活用する
・老朽化空き家付きや再建築不可、共有持分など制度の要件を満たしにくい土地は、訳あり不動産に強い買取専門会社に査定を依頼する
・都市部の収益性の高い不動産は売却や賃貸を検討し、地方の管理負担が大きい土地は国庫帰属や買取で出口を設計する
相続土地国庫帰属制度は、公的な出口として非常に有用です。しかし、制度の外側に残ってしまう「扱いに困る土地」が確実に存在します。株式会社SAは、そのような訳あり不動産の出口を一緒に考えるパートナーとして、相続土地の整理と資産の組み替えをサポートしています。
訳あり不動産でお悩みの方へ
共有名義・再建築不可・相続放棄・所有者不明・老朽化空き家・事故物件など、扱いに困る不動産をお持ちではありませんか?株式会社SAが法務整理から売却・再生・引取までを一貫サポートします。
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