不動産の取引で耳にする「共有持分」とは、ひとつの物件を複数人で所有している状態を指します。相続や夫婦共同名義など、身近な場面で共有状態が生まれることは少なくありません。しかし、いざ売却を考えると、単独所有の物件に比べて価格が安くなってしまうことが多くの人を悩ませます。なぜ共有持分は安く評価されやすいのか。そして、どのようにすれば少しでも高く売却できるのか。本記事では、不動産鑑定士・宅地建物取引士の視点から、わかりやすく解説していきます。専門用語はできるだけ避け、初心者でも理解しやすい内容を目指しましたので、ぜひ参考にしてください。
共有持分が安くなる理由
まず、共有持分が通常の不動産より安くなる主な理由を整理してみましょう。大きく分けて以下のような要因が考えられます。
1. 単独で自由に使えない
共有持分の最大の特徴は、一人だけの判断で自由に利用や処分ができないことです。建物を建て替えたい、リフォームしたい、あるいは物件を貸し出したいといった大きな決定は、原則として他の共有者全員の合意が必要です。
そのため、持分だけを買った人が「すぐに賃貸収入を得たい」「転売したい」と考えても、他の共有者との交渉がうまくいかなければ計画通りには進められません。こうした不自由さが買い手にとってリスクとなり、市場価値を下げる要因になります。
2. 買い手が限定される
通常の土地や建物であれば、「住みたい人」「投資したい人」など幅広い買い手が見込めます。一方、共有持分だけを購入したい人は限られています。
例えば、不動産投資家の中には「他の共有者の持分も買い集めて、将来単独所有を狙う」という戦略をとる人もいますが、そうした投資家は決して多くありません。また、一般の居住ニーズを持つ方がわざわざ共有持分を好んで買うことはまれです。
このように需要が少ないと、相場よりも買い叩かれてしまう可能性が高く、結果として価格が安くなる傾向があります。
3. 法律や相続問題などリスクが多い
共有物には、法的な手続きや共有者同士のトラブルが潜在的に多く存在します。たとえば相続が繰り返されて共有者が増えてしまうと、合意形成がさらに難しくなるケースがあります。また、「共有物分割請求」という制度により、共有者の一人が裁判を起こして物件全体を強制的に売却(競売)する可能性も否定できません。
こうしたリスクを理解している買い手ほど、共有持分を安くしか買わないか、そもそも手を出さない場合が多いのです。
4. 融資のハードルが高い
住宅ローンなどを組む場合、金融機関は不動産を担保として評価します。しかし、共有持分だけでは担保価値が低いと判断され、融資を受けにくいという現実があります。
これは買い手の資金調達が難しくなることを意味し、現金購入が可能な限られた層しか対象とならない可能性が高いです。結果として、買い手がさらに絞られてしまい、価格競争力が下がってしまいます。
共有持分を高く売却するためのポイント
では、こうしたデメリットを抱える共有持分を、少しでも高く売却するにはどのような対策をとればよいのでしょうか。以下にいくつかの具体的な方法や考え方を紹介します。
1. 他の共有者に買い取ってもらう
もっとも現実的でスムーズな方法が、「他の共有者に自分の持分を買い取ってもらう」というやり方です。他の共有者にとっては、持分を集めることで単独所有に近づき、不動産を自由に活用できるメリットが得られます。
そのため、第三者に売る場合よりも高い価格で買い取ってくれる可能性が期待できるのです。
ただし、この方法は他の共有者が資金的余裕や買い取る意欲を持っていることが前提となります。あらかじめ共有者全員と話し合い、相手に買い取るメリットをアピールすることが大切です。
2. 物件全体を一括売却する
共有状態のまま持分だけを売るより、「共有者全員が合意して、物件全体をまるごと売却する」ほうが、単独所有物件と同じように広い需要を取り込めます。
結果的に市場価格に近い金額で売れる可能性が高まるため、一人ひとりの取り分(持分相当額)を増やしやすいです。
「他の共有者が売却に同意しない」という問題はありますが、全体売却が可能なら検討してみる価値は十分あるでしょう。
3. 買い手にメリットを明確に提示する
共有持分を第三者に売る場合、「持分を購入するとどんなメリットがあるのか」をしっかり打ち出すことで、価格を引き上げる交渉材料になります。
たとえば、周辺環境が良い、将来的に再開発の計画がある、他の共有者が売却に前向きで、全体の取得が見込める、など具体的な魅力を訴求しましょう。
ただ漠然と「安いからどうですか」では買い手も躊躇してしまいます。投資家や不動産会社など、共有持分を積極的に検討する層に向けて情報発信すると効果的です。
4. 実績ある仲介会社や専門家に相談する
共有持分の売却は、通常の不動産取引よりも複雑で需要も限られます。共有持分の売買に精通した仲介会社や、不動産鑑定士・弁護士などの専門家に相談することで、スムーズな手続きや適正価格の提示が可能となります。
特に、不動産投資家や買取業者とのコネクションを持つ仲介会社を選ぶと、意外な高値がつくケースも期待できます。
売却準備で押さえておきたいポイント
共有持分を高く売却したいと考えるなら、事前の準備がとても重要です。以下のポイントを押さえておけば、買い手からの信頼度が増し、交渉力がアップする可能性があります。
1. 相続登記や名義変更を済ませておく
まずは、「誰がどのくらいの持分を持っているか」を法的に明確にしておくことが大切です。相続登記が未了の状態で売りに出しても、買い手は安心して契約に踏み切れません。
特に、最近の法改正で相続登記が義務化される流れもあるため、早めに登記を済ませておくとスムーズです。
2. 共有者との協議・連絡を密にする
高く売りたいなら、他の共有者との協力が不可欠です。一括売却の合意を得られないまでも、たとえば他の共有者が売却に反対しない、購入希望者にとって魅力的な条件を提示してくれるなど、協力的であることが価格上昇につながるケースがあります。
反対に、共有者同士のトラブルが表面化していると、買い手はリスクを嫌って買いたがらず、価格も下がりやすくなります。定期的に共有者間でミーティングを行うなど、コミュニケーションを大切にしましょう。
3. 物件の状態把握と資料の整理
「古い家屋が建っている」「一部が賃貸中になっている」など、物件の現況を正確に把握し、必要な資料を揃えておくことも大事です。建物図面、測量図、賃貸契約書(もし賃貸として運用中なら)などがあれば、買い手に対して具体的に状況を説明しやすくなります。
情報を開示することで、買い手も安心して購入検討を進められ、結果として価格交渉が有利になるかもしれません。
4. 市場相場と比較する
共有持分の相場は、物件全体の市場価格から割り出すのが基本です。しかし、共有持分であるというだけで大きなディスカウントが発生しがちなため、どの程度の割引が一般的なのかを複数の専門家に相談して確認しましょう。
特に、立地条件や建物の状態などによってディスカウント率が変わるため、経験豊富な不動産会社や不動産鑑定士のアドバイスが役立ちます。
共有持分売却の手順と流れ
実際に共有持分を売りに出す場合、大まかな流れは以下のとおりです。これを把握しておくと、実務での手続きがスムーズに進みやすくなります。
- 不動産会社に相談
共有持分の売買経験があるか、実績をチェックしましょう。複数社に相談して査定を比較するのがおすすめです。 - 売却価格の決定
査定結果や他の共有者の意向を踏まえ、売却価格を確定します。もし他の共有者が買い取りを希望するなら、その交渉から始めるのも一手です。 - 媒介契約を結ぶ
仲介を依頼する不動産会社と媒介契約を締結し、売却活動を本格化させます。物件情報の公開や広告などが行われます。 - 購入希望者との交渉
価格や引き渡し条件などを交渉し、契約条件を整えます。共有持分ならではのリスク説明や契約内容の特約などに留意が必要です。 - 売買契約の締結
契約書に署名捺印し、手付金の受け取りなどを行います。共有持分の売却契約は、物件全体の売買契約とは異なる記載が含まれる場合があります。 - 決済・持分移転登記
残金を受け取り、司法書士の手配で持分移転の登記を行います。これで正式に所有権が買主に移転します。
まとめ
共有持分は、一つの物件を複数人で所有する形態のため、単独所有と比べて流動性が低く、合意形成のハードルが高いという特徴があります。その結果、市場評価が安くなりがちです。
しかし、他の共有者に買い取ってもらう、物件全体を一括売却する、あるいは実績ある専門家を通じて買い手にメリットをしっかり提示するなどの手段を駆使すれば、思わぬ高値で売れる可能性もあります。
大切なのは、共有者との連携と事前準備、そして共有持分の需要とリスクを適切にアピールできる不動産会社の活用です。これらを意識しながら売却活動を進めることで、共有持分の価値を最大限に引き出し、高い価格で取引できるチャンスを広げることができるでしょう。
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