相続や共同購入で手に入れた不動産が共有名義で、いざ売りに出そうとしてもなかなか買い手がつかない…。そんな悩みを抱える方は少なくありません。実は「共有不動産」が売れにくいのには、いくつかの理由があります。しかし、ポイントを押さえて対策を講じれば、思わぬ形で市場価値を上げ、スムーズな売却につなげることも可能です。本記事では、不動産鑑定士・宅地建物取引士の視点から、共有不動産が売れない理由と、その市場価値を上げる具体策5選を解説します。共有者同士のトラブルを回避しながら、資産を有効に活用していきましょう。
共有不動産が売れない理由
そもそも、共有不動産が売れにくい背景にはどのような要因があるのでしょうか。大きく分けて以下の3つが挙げられます。
1. 意思決定が難航しやすい
共有名義の不動産を売却する際には、共有者全員の同意が原則として必要です。「現金化したい人」「住み続けたい人」「賃貸で運用したい人」と意見が対立すると、売却計画自体が先送りになるケースも少なくありません。合意形成に時間がかかるだけでなく、買い手からすると「トラブルに巻き込まれるリスクが高い」と敬遠されがちです。
2. 権利関係が複雑
買い手にとっては、共有者が複数いる物件は、後々のトラブルを想起させます。もし持分の一部だけを購入する場合は、他の共有者との協調が必須ですし、物件全体を購入するにしても、全共有者の手続きが円滑に進まないと取引が成立しないため、「手間がかかる」と認識されやすいのです。
3. 市場性の低下
一般的に、不動産は単独所有の方が流通性が高く、価格も安定しています。一方、共有状態だと自由な使い方や再開発が難しくなるため、不動産の潜在的な価値をフルに発揮しにくく、市場価格が下がりやすい特徴があります。買い手から見て魅力が少なくなるのは否めません。
市場価値を上げるための具体策5選
それでは、共有不動産を売却する際にどのような工夫をすれば、市場価値を上げることができるのでしょうか。以下、5つの具体策を順に解説します。
1. 共有状態の解消を検討する
最も有効なのは、共有状態そのものを解消してから売りに出す方法です。たとえば、共有者の一人が他の共有者の持分を買い取ったり、共有物分割請求(法的手段)を検討して単独所有にすることで、不動産の流通性が大きく向上します。
- 買い手にとっては、単独所有の物件を購入する方が手続きも明確で安心
- 価格面でも、共有状態より高値がつきやすい
ただし、買い取り資金が必要だったり、共有物分割請求には時間と費用がかかる点がデメリットです。共有者全員の合意を得られるなら、もっとも効果的な戦略と言えます。
2. 不動産鑑定士による正確な評価を取得する
売却の際には「正当な価格」を明示できることが重要です。共有者同士が感情論で価格を決めようとすると、相場とかけ離れた金額を設定して買い手がつかず、時間だけが経過するケースが多々あります。
そこで、不動産鑑定士の鑑定評価や専門的な査定を活用することで、客観的な根拠に基づいて価格設定が可能になります。買い手からしても、評価書があれば安心材料となり、交渉をスムーズに進めやすくなります。
3. 共有者の意見を早めにまとめる仕組みをつくる
売却計画が進まない最大の理由は、共有者間の意見対立が解決しないまま先送りになることです。そこで、定期的なミーティングの開催や、オンラインでの情報共有など、全員の意思決定をサポートする仕組みを整えることが大切です。
- 共有者全員が納得できる目標価格や最低ラインを設定
- 売却期限を設け、ダラダラと話が長引かないようにする
- 専門家(弁護士・不動産鑑定士)を交えて中立的な立場からアドバイスを受ける
このような取り組みによって、買い手に対しても「共有者同士がしっかり連携している物件」という安心感を与えられます。
4. 物件の魅力を引き出すリノベーションやクリーニング
共有不動産が老朽化していたり、長年放置されていたりすると、第一印象で敬遠されがちです。そこで、軽微なリフォームやクリーニングを行い、物件の魅力を高めると良いでしょう。
- 壁紙の張り替えや床材の修理
- キッチンや水回りの部分リフォーム
- プロのハウスクリーニングで内見時の印象アップ
特に、共有者が複数いて費用を分担できる場合、少額の投資で物件の印象がガラッと変わり、結果的に売却価格を引き上げる効果が期待できます。
5. 専門業者や買取業者への売却を視野に入れる
「一般の個人買い手には敬遠されがちだけれど、投資家や専門業者なら買ってくれる」というケースもあります。
- 共有持分専門の買取業者
- 底地や再建築不可物件を扱う投資家
- リノベーション事業者
これらの業者は、ノウハウを活かして転売や再生を目指すため、通常の市場よりも柔軟に取引が進む可能性があります。価格はやや安くなるかもしれませんが、共有者間の意見が一致して「早期に確実に売却したい」という場合には有効な選択肢です。
【事例】共有不動産の売却成功例
実際の成功例として、以下のようなケースがあります。相続で親の実家を共有した兄弟3人が、老朽化した築古住宅を共同で持っていました。当初、兄弟間の意見がまとまらず売りに出すまでに2年以上かかりましたが、以下のステップを踏むことで無事に売却に成功しました。
- 不動産鑑定士の評価を取得:相場より高すぎる設定で買い手が見つからないリスクを回避
- 兄弟で合意した売却期限を設定:半年以内に売れなければ専門業者へ買取打診
- 軽微なリフォームとハウスクリーニング:内見に来た買い手からの印象を改善
- 不動産会社と連携し、広範囲に広告:インターネットやチラシ、SNSまで活用
結果的に、想定より高めの価格で個人買い手が見つかり、兄弟3人とも満足できる形で売却が成立した例があるのです。
まとめ
共有不動産が売れない理由は、主に「意思決定の難しさ」「権利関係の複雑さ」「市場性の低下」にあります。とはいえ、以下の5つの具体策を実行すれば、売りにくいとされる物件でも市場価値を上げ、スムーズな売却が期待できます。
- 共有状態の解消を検討し、単独所有にしてから売る
- 不動産鑑定士による正確な評価を活用し、客観的な価格設定を行う
- 共有者間のコミュニケーション体制を整え、早めに合意形成を図る
- リノベーションやクリーニングで物件の魅力を高める
- 専門業者や買取業者への売却も視野に入れる
共有不動産は、多くの関係者の意向や感情が絡むため、問題を放置するとトラブルが長期化しがちです。早めに手を打ち、専門家を適切に活用しながら、最良の結果を得られるよう進めていきましょう。
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