「相続人の一人が海外に住んでいる」「自分は遠方在住だが共有不動産を売却したい」――国際化が進むなか、こうしたケースは珍しくありません。物理的に集まって話し合うのが難しいため、共有名義の不動産売却はさらにハードルが高まるとも言えます。しかし、情報通信技術の発達と、弁護士・司法書士など専門家のサポートを活用すれば、海外在住者でも円滑に売却手続きを進められる可能性が大いにあります。ここでは、不動産鑑定士・宅地建物取引士の専門的視点から、「海外在住の相続人が共有不動産を売る際のポイント」を解説します。
海外在住の相続人が直面する3つの課題
海外在住者が共有不動産の売却に関与する場合、以下のような特有の課題が生じます。
1. 時差とコミュニケーションの問題
日本と大きく時差のある国に在住していると、電話やオンライン会議でスケジュールを合わせるだけでも難しく、書類のやりとりが遅れがちです。結果として、共有者同士の合意形成に時間がかかります。
2. 印鑑証明や署名証明の手続き
日本国内の不動産取引では印鑑証明が必須ですが、海外在住者は在外公館(領事館など)で署名証明を取得する必要がある場合が多いです。これを知らないままだと、売買契約や登記で手続きが滞ります。
3. 税務申告・納税が複雑化
不動産を売却して得た譲渡所得は日本で申告が必要ですが、海外在住者は現地での所得申告との二重課税問題や条約適用など、国際税務の観点を加味する必要が出てきます。
遠隔で共有物件を売る際のポイント
これらの課題を乗り越え、海外在住の相続人が安心して共有不動産を売却するためにはどうすればよいのでしょうか。
1. 代理人を立てる
最も現実的なのは、日本国内にいる弁護士や司法書士、あるいは信頼できる親族を代理人として選任し、売却手続きを進めてもらう方法です。海外在住者本人はオンライン会議などで重要事項を確認し、書類の署名・捺印を在外公館で行えばよいでしょう。
代理人には委任状を作成し、売買契約締結や登記申請などを一任できるよう準備します。
2. 電子認証や電子署名を活用
近年、一部の手続きで電子署名やオンライン認証が認められる方向に進んでいます。ただし、まだ全ての不動産登記手続きに完全対応しているわけではありません。具体的に利用できるかどうかは弁護士・司法書士に確認し、印鑑証明・署名証明のどちらが必要なのかを事前に把握しましょう。
3. 不動産鑑定士による評価で公正な価格を確認
海外在住者は物件の現状を直接見られないことが多いので、不動産鑑定士の評価書がとても役立ちます。共有人数が多い物件でも客観的根拠を提示すれば、海外在住者も「この価格なら信頼できる」と判断しやすく、売却交渉がスムーズになります。
税務申告の注意点:二重課税と租税条約
海外在住の相続人には、売却による譲渡所得を日本で申告しなければならない場合があります。その際、現地の税務当局からも課税される可能性があるため、二重課税を防ぐために租税条約を確認しましょう。
1. 譲渡所得の日本での申告
国内にある不動産の売却益は、原則として日本で譲渡所得税の対象となります。海外在住でも非居住者として確定申告しなければならない場合が多いです。ここで取得費や経費、保有期間(5年超で長期譲渡)がどうなるかなどの論点を税理士と確認しましょう。
2. 租税条約の適用
日本と在住国との間に租税条約が締結されていれば、二重課税を回避する仕組みが設けられていることがあります。具体的には、「日本で課税された分を在住国の税額から控除できる」などの制度が想定されます。条約の有無や内容は、必ず税理士に照会すると安心です。
実際に海外在住者が共有不動産を売却した成功事例
例えば、日本在住の兄弟とアメリカ在住の姉が共有していた実家を売却したケースでは、以下のステップでスムーズに取引が成立しました。
- 不動産鑑定士の評価で売却価格帯を把握
- 日本在住の兄が代理人となり、在外公館での署名証明を姉が取得
- 税理士が二重課税リスクを調査し、アメリカでの申告方法をアドバイス
- 競合する複数の不動産会社に声をかけ、一般媒介契約で広く買い手を募る
- 予定より短期間で希望価格に近い金額で売却が成立
まとめ
海外在住の相続人がいる共有不動産は、一見ハードルが高そうですが、以下のポイントを押さえておけばスムーズな売却が可能になります。
- 在外公館での署名証明や委任状など、事前に必要書類を把握
- 日本国内で代理人を立て、やりとりを効率化
- 不動産鑑定士の評価を参考に、適正価格で売り出す
- 税理士との連携で、二重課税や租税条約の観点から最適な納税計画を立てる
- 複数の不動産会社に依頼して買い手を広く探す戦略も検討
遠隔地や海外在住という事情があっても、近年はオンライン会議システムや国際郵送、専門家のサポートが充実しており、従来ほどの困難はありません。共有者同士で合意形成をしながら、法的リスクや税務面の対策を万全に整えて、安心して物件を売却してください。
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