共有名義の不動産をどう活用すべきか、頭を悩ませている方は多いのではないでしょうか。相続や共同購入などで複数人が権利を持つ共有不動産では、「売却して現金化する」「賃貸に出して収益を得る」「空き家のまま放置する」など、さまざまな選択肢があります。しかし、共有者同士の意向が一致しないと意思決定が進まず、結果的に資産価値を損なってしまうことも。本記事では、不動産鑑定士・宅地建物取引士として培った専門知識をもとに、共有不動産を売却する場合と賃貸に出す場合のメリット・デメリット、そして最適な活用方法を詳しく解説します。
共有不動産とは
1つの不動産(建物や土地)を複数人がそれぞれ持分割合で所有している状態を共有不動産と呼びます。たとえば、相続で兄弟3人が均等に土地を相続したり、投資目的で数名が資金を出し合ってマンション1室を購入したりするケースが挙げられます。
共有不動産では、利用や処分方法を決めるには共有者全員の合意が必要です。そのため、意見が合わない場合や連絡が取りづらい共有者がいる場合、トラブルや手続きの停滞が生じることがあります。
売却か賃貸か? まずは判断基準を明確に
共有不動産をどう活用するかを考える際、大きく分けて「売却する」「賃貸に出す」という2つの選択肢があります。どちらを選ぶべきか迷うときは、まず以下のような観点で判断基準を整理しましょう。
1. 共有者全員の意向・状況
共有不動産の処分や利用方法を決定するには、すべての共有者の合意が欠かせません。
- 現金化を望む共有者
- 不動産をそのまま保持していたい共有者
- 賃貸収益を得たい共有者
こうした意見が衝突している場合、まずは話し合いによる合意形成を目指しましょう。
どうしても合意が得られない場合は、持分の買い取りや共有物分割請求といった手段を検討することも視野に入ります。
2. 不動産の立地・需要
立地条件や建物の状態、周辺の需要などによって、不動産の価値や収益性は大きく異なります。交通の便が良い都会のマンションであれば賃貸需要が高い可能性があり、逆に地方の空き家のような物件だと賃貸運用は難しく、売却による資産化が得策の場合も。
不動産鑑定士や不動産仲介業者などの専門家に査定を依頼し、市場価値や賃貸需要を正確に把握することで、より合理的な判断ができます。
3. 税務や法的リスク
売却と賃貸では、税務上の取り扱いも異なります。売却で利益が出れば譲渡所得税がかかる可能性がありますし、賃貸に出す場合は家賃収入に対して所得税が課されることになります。また、賃借人との契約上のトラブルを避けるために、賃貸借契約や管理業務を適切に行う体制を整えることも必要です。
共有者全員が合意したうえで、税理士や弁護士といった専門家にも早めに相談しておくと安心です。
共有不動産を売却するメリット・デメリット
まず、共有不動産を売却する場合のメリットとデメリットを整理してみましょう。
【メリット】
- 現金化しやすい:売却代金を共有者間で分割できるため、資金がすぐに手元に入る。
- 管理コストが不要:固定資産税や修繕費などを今後負担する必要がなくなる。
- トラブル回避:共有状態が解消されるため、意思決定を巡る対立が収束する。
【デメリット】
- 市場価格が安くなる恐れ:「共有不動産」として売り出すと買い手が見つかりにくく、価格が下がるリスクがある。
- 共有者全員の合意が必要:一人でも反対すれば売却が進まず、トラブルに発展することも。
- 譲渡所得税の負担:取得費などを差し引いた譲渡益に対して税金が課される場合がある。
共有不動産を賃貸に出すメリット・デメリット
次に、賃貸に出す場合のメリットとデメリットを見ていきます。
【メリット】
- 継続的な収益が得られる:家賃収入を共有者間で分配することで、安定的なキャッシュフローを生み出せる。
- 資産価値の維持:空き家のまま放置すると劣化が進むが、賃貸物件として利用すれば物件の状態が保たれる可能性がある。
- 将来的な売却も視野に:賃貸中でも、契約期間や条件次第では売却が不可能ではない場合がある。
【デメリット】
- 管理・メンテナンスの手間:賃貸募集や修繕、家賃回収などを共有者同士でどう分担するかを決める必要がある。
- 家賃トラブルのリスク:賃借人との間で家賃滞納や退去条件を巡るトラブルが発生する可能性がある。
- 賃貸収益の分配問題:家賃収入をどのように按分するのか、また税金をどのように申告するのか、共有者間で合意形成が必要。
事例で見る共有不動産の活用術
ここでは、実際に共有不動産を上手に活用した事例を2つご紹介します。
【事例1】兄弟で相続した郊外の一戸建てを売却
両親が住んでいた郊外の一戸建てを兄弟2人で相続。兄はすでにマイホームを所有しており、弟も遠方に住んでいて利用予定はない。
- 問題点:家の老朽化が進み、維持費が高くなる。修繕して賃貸に出すほどの魅力的な立地でもない。
- 解決策:共有者全員が売却に同意し、不動産会社に依頼して相場に近い価格で売却を実現。売却代金を按分して得た現金で、兄弟それぞれのライフプランに合わせた資金活用を行った。
- 結果:固定資産税や修繕費などの負担がなくなり、兄弟間の関係も円満に保てた。
【事例2】共同購入した都心マンションを賃貸運用
友人3人で都心のマンション1室を投資目的で購入。将来的に売却益を狙う一方で、賃貸収入によるインカムゲインも得たいというのが共通の目標。
- 問題点:管理会社の選定や修繕計画、家賃の振り込み先や経費精算など、細かい運用ルールが必要。
- 解決策:管理委託契約を大手の不動産管理会社と締結し、家賃回収や修繕手配を一括して任せる。収支報告や必要な経費精算も管理会社が取りまとめ、3人に定期的に報告する仕組みを整えた。
- 結果:安定した家賃収入を得られ、将来的に市場価格が上がったタイミングでの売却も視野に入れている。共有者間のトラブルはほぼ皆無。
最適な選択をするための3つのポイント
実際に「売却か賃貸か」を判断し、共有者同士で最適な選択をするには、以下の3つのポイントを意識しましょう。
1. 共有者同士のコミュニケーションを重視する
一人でも反対する共有者がいれば、意思決定は長期化する恐れがあります。定期的なミーティングやオンラインでの情報共有など、全員が納得できるプロセスを踏むことが大切です。早めに互いの希望や懸念を把握し、意見のすり合わせを行いましょう。
2. 不動産の時価や賃貸需要を客観的に把握する
売却価格を見積もるには、不動産鑑定士の評価や複数の不動産会社による査定が有効です。また、賃貸に出す場合は、そのエリアの空室率や家賃相場を調べ、どれだけの収益が見込めるかを計算しましょう。定量的なデータに基づいて検討することで、共有者間の合意形成をスムーズに進められます。
3. 専門家と早めに連携する
法律や税務、契約書作成などの専門知識を要する場面が多いので、弁護士や税理士、司法書士、不動産鑑定士などと連携しながら話を進めるのがおすすめです。特に、大きな資産価値がある物件や、相続トラブルが起こりそうな場合は早めにプロのサポートを受けることで、リスクを最小限に抑えられます。
まとめ
共有不動産を売却するか賃貸に出すかは、共有者全員の意向、物件の立地・需要、税務・法的リスクなどを総合的に判断し、最適な方法を選ぶ必要があります。特に以下の点を押さえておくと、より円滑に活用方針を決定しやすくなります。
- まずは共有者同士でコミュニケーションを徹底し、意見を統一する
- 不動産の適正価格や家賃相場、将来性などを専門家に査定してもらう
- 売却による即時の現金化か、賃貸による継続的な収益か、メリット・デメリットを比較検討する
- 合意形成が困難な場合は持分売却や共有物分割請求などの選択肢を視野に入れる
共有不動産は複数人の権利が絡み合うため、合意形成に時間がかかるケースが多いですが、早めの準備と正確な情報収集が成功へのカギとなります。専門家の力を借りながら、最大限の資産活用を目指してみてはいかがでしょうか。
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