不動産を複数人で所有している「共有状態」の物件について、相続や売買、トラブル解決などで必ず確認すべきなのが不動産登記簿です。登記簿には、その不動産がどのような形で誰に所有されているか、権利関係がどのようになっているかが詳細に記載されています。しかし、初心者の方には専門用語が多く、どこを見れば自分の知りたいことがわかるのか迷ってしまうケースも多いでしょう。
本記事では、不動産共有持分における不動産登記簿の読み方を、できるだけ専門用語を避けつつわかりやすく解説します。複数人で所有している不動産の登記簿を確認したい方や、将来的に不動産を売却・分割しようと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
不動産登記簿とは?まずは基本から
不動産登記簿(登記事項証明書とも呼ばれます)は、その不動産の概要や所有者、そして抵当権などの権利関係を公に示す書類です。法務局で管理されており、一般の人でも取得可能となっています。
通常は、大きく以下の3つの部分から構成されています。
- 表題部
- 甲区(所有権に関する事項)
- 乙区(所有権以外の権利に関する事項)
このうち、共有名義や共有持分に関する記載は、主に甲区に出てきます。それぞれの内容を順番に見ていきましょう。
表題部:不動産の基本データを見る場所
不動産登記簿の最初の部分が「表題部」です。ここには、土地や建物に関する基本的な情報が書かれています。例えば、土地なら「地番」「地目(宅地・田・畑など)」「地積(面積)」が記載され、建物なら「家屋番号」「種類(居宅・店舗など)」「構造(木造・鉄筋など)」「床面積」といった情報があります。
ポイント1:地番と家屋番号
地番は、土地を特定するための番号で、住所とは異なることが多い点に注意が必要です。また、建物の場合は「家屋番号」という番号があり、これも住所とは別物です。
登記簿上では、地番や家屋番号を基準として不動産が特定されるため、共有持分を確認するときにはまず「自分が関係する不動産がどの地番・家屋番号なのか」をしっかり確認しましょう。
ポイント2:地目や構造で土地・建物の性質を把握する
土地の地目が「宅地」でも実際は空き地だったり、家が建っていたりするケースがあります。逆に地目が「田」や「畑」になっていると、農地法などの制限を受ける可能性があります。
建物の場合は、構造(木造・鉄筋コンクリート造など)や階数、床面積が記載されているので、共有者同士の活用や改築の相談をする際に参考となります。
甲区:所有権の情報を確認する要の部分
不動産登記簿の「甲区」には、所有権に関する情報が集約されています。単独名義の場合は1人の名前しか書かれませんが、共有名義の場合はここに「共有者それぞれの氏名(名称)と持分割合」が記載されています。
ポイント1:共有者の氏名と持分割合
甲区を見れば、誰がどれだけの割合で所有しているかが明確にわかります。例えば、3人で共有しているなら「A 2分の1、B 4分の1、C 4分の1」といった具合に記載されることが多いです。
この割合がいわゆる「共有持分」に当たるため、共有者同士の話し合いはここをしっかり把握した上で進めましょう。
ポイント2:登記名義人の変遷
甲区には、登記原因(売買・相続・贈与など)と登記年月日も記載されています。所有者がどのような経緯で不動産を取得したのかを把握できるため、過去に相続があったのか、親子間で持分の譲渡が行われたのかなどを確認するのに役立ちます。
ポイント3:持分移転の登記がされているかどうか
共有者の一人が持分を売却・贈与した場合、その履歴が甲区に残ります。もし、実際には持分を譲渡しているのに登記が更新されていなければ、第三者から見ると「まだ旧所有者が持分を持っている」と誤認されるリスクがあります。
登記を最新の状態にしておくことで、共有者間のトラブルを防ぎやすくなるでしょう。
乙区:抵当権など所有権以外の権利をチェック
乙区には、所有権以外の権利(抵当権、賃借権、地上権など)が設定されている場合に、その内容が記載されています。
ポイント1:抵当権の有無を確認
住宅ローンなどで不動産を担保にしている場合、抵当権が設定されているはずです。
共有名義の物件の場合、共有者の中の誰かが自分の持分にのみ抵当権を設定しているケースもあり得ます。
売却や共有物分割を検討している場合は、抵当権があると金融機関との調整が必要となるため、注意が必要です。
ポイント2:賃借権や地役権の記載
建物を貸している場合や、土地の一部を通行に使うなどの場合、賃借権や地役権が設定されていることがあります。
共有の不動産にこうした権利が設定されていると、自由に活用しにくくなる可能性があるため、乙区の記載を見逃さないようにしましょう。
共有持分に注目する際の登記簿チェックポイント
ここでは、特に共有持分にフォーカスして登記簿を見る際の具体的チェックポイントをまとめてみました。
1. 甲区の「共有者」と「持分割合」を確認
共有名義の場合、甲区には「共有者の数」と「各人の持分」が必ず記載されます。「A 3分の2、B 3分の1」など具体的に明記されているはずです。
もし「持分」の記載がなく「○○と○○の共有」などと書かれているだけの場合でも、登記識別情報や関連書類には割合が明記されている可能性が高いので確認しましょう。
2. 「共有持分」が最新の状態かどうか
実際には持分を譲渡しているのに、登記が古いまま放置されているケースもあります。
売買や贈与によって持分が移転していれば、速やかに登記を更新しなければ法的に第三者に対抗できない可能性が出てきます(対抗要件の問題)。
遅れてしまった場合も、共有者間でトラブルになる前に正しい登記手続きを行うことが望ましいでしょう。
3. 債権者や抵当権者が誰か
乙区を確認して、誰が抵当権を設定しているのかを把握します。特に、共有者のうちの一人だけが融資を受けて自分の持分に抵当権を設定している可能性もあります。
持分を売却する際や、共有物分割の際には、抵当権者への対応が必要になるため見落とさないようにしましょう。
登記情報を入手するには?
不動産登記簿(登記事項証明書)は、法務局で直接取得するか、インターネット(登記情報提供サービス)で閲覧・取得ができます。
法務局で取得する場合は、窓口で「登記事項証明書の交付請求書」を記入し、必要な手数料を支払って取り寄せる形です。インターネットの場合はユーザー登録が必要ですが、自宅やオフィスで気軽に閲覧・ダウンロードできるメリットがあります。
どちらにしても、有料での取得となるので、必要な物件の地番や家屋番号を事前にしっかり調べておきましょう。
登記簿を読み取った後にできるアクション
共有持分に着目しながら登記簿を確認すると、その後の行動が具体的に見えてくる場合があります。以下のようなアクションを検討してみましょう。
1. 共有者同士での話し合い
共有者それぞれの持分割合や、抵当権などの状況が把握できたら、話し合いのベースが整います。「これだけの持分を持っているので、売却したい/買い取りたい」「抵当権があるから金融機関との交渉が必要」といった形で具体的に協議を進めましょう。
2. 専門家への相談
もし登記簿を見ても不明点が多い場合や、持分を売却・分割したいが手続き方法がわからない場合は、不動産鑑定士、司法書士、弁護士などの専門家に相談するとスムーズです。
特に、売買や相続で持分が増えたり減ったりしている場合、税金の計算や正確な登記手続きが必要になるため、プロの力を借りることをおすすめします。
3. 共有物分割や持分売買の検討
複数の共有者がいて意見がまとまらない場合は、共有物分割(協議や裁判による分割)や、持分売買(自分の持分を他の共有者または第三者に売る)を検討することも一案です。
登記簿情報を正確に把握しておけば、後の手続きで無用なトラブルを避けやすくなります。
よくあるQ&A:共有物分と不動産登記簿
ここでは、共有状態の不動産登記簿に関して、よくある質問をピックアップしました。
Q1:登記簿には「共有」としか書いてないんだけど、持分はどこに載っている?
A:甲区を見ると、登記名義人の名前の横に持分(割合)が書かれている場合がほとんどです。もし見当たらないようなら、関連書類(登記原因証明情報など)や過去の登記事項証明書を確認すると、どこかに記載があります。
不明な場合は、法務局や司法書士に相談してみましょう。
Q2:相続で共有になったが、登記簿を更新していない。問題ある?
A:登記名義が故人のままだと、売買や融資などを行う際に不都合が出てきます。相続手続き後は、早めに名義変更(相続登記)を行い、共有持分を正しく反映させることが大事です。
2024年4月以降は相続登記が義務化される見込みなので、放置は避けましょう。
Q3:共有者の一人が抵当権を設定していた場合、他の共有者にも影響はある?
A:抵当権は、通常は設定した持分にのみ及びます。つまり、他の共有者の持分まではカバーしないのが原則です。しかし、いざ分割や売却をする際に、抵当権をどうするか金融機関と協議する必要があり、全体の協議が複雑化する可能性があります。
Q4:登記簿を見ても実際の利用状況と違う…どうすれば?
A:実際には建物があるのに地目が「畑」になっていたり、増築したのに登記されていない場合は、登記変更手続きが必要です。長年放置されるといざ売却・相続のときにトラブルになりやすいので、早めに修正しておきましょう。
まとめ
不動産登記簿は、その物件の権利関係を示す重要な公的書類です。共有持分を正確に把握したいときは、甲区を中心に「誰がどのくらいの割合で所有しているのか」を確認し、乙区で抵当権や賃借権がないかをチェックしましょう。
登記情報をしっかり読み取れば、共有者同士の話し合いもスムーズになり、売買や分割を検討する際の大きな手がかりとなります。また、相続や持分の移転に伴って情報が古いままになっていないかどうかを確認し、必要があれば専門家の助けを借りて登記を更新することも大切です。
もし登記簿を読んでもわからない箇所が多い、あるいは共有状態が複雑で悩んでいる場合は、不動産鑑定士や司法書士、弁護士などへ相談し、トラブルを未然に防いでください。正しく読み解いた登記情報は、不動産共有問題の解決への第一歩です。
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