家族で相続した不動産など、複数人が共同で所有している状態(共有)では、各自の持分(所有権の割合)を売却することが可能です。ところが、あなたの知らないうちに親族が自分の持分だけを他人に売却していたとしたら、どうなるでしょうか?
不動産を共有している一員としては、「見ず知らずの人が共有者として入ってきたら困る」と感じる方も多いはず。本記事では、こうした状況で生じ得るリスクや注意点について、できるだけ専門用語を避けながらわかりやすく解説します。検索でも見つかりやすいようにポイントを押さえていますので、ぜひ最後まで読んでみてください。
共有持分の売却は自由?基本的な法律ルール
まず大前提として、不動産を複数人で共有している場合でも、それぞれの人が持つ「持分」自体は自由に売買することができます。たとえ他の共有者が「やめてほしい」と思っていても、法律上は原則として自分の持分を処分してもOKとされているのです。
このため、親族が自分の共有持分だけを「見ず知らずの第三者」に売却してしまうことは、違法でもなんでもありません。もちろん、農地法の制限がある場合や共有物分割禁止の特約がある場合など、特殊なケースは別ですが、一般的な宅地・建物では自由処分が認められています。
他の共有者に及ぶ影響とリスクとは?
それでは、「自分の知らない人がいきなり共有者になる」ことで、残りの共有者にどのような影響やリスクがあるのでしょうか?代表的な例を挙げてみましょう。
1. 意思決定がさらに難しくなる
共有状態とは、土地や建物を複数人で所有している状態のことです。売却や建替え、大規模なリフォームなど、重要な判断をするときには共有者全員の合意が必要となる場合が多いです(特に共有物の変更や処分の場合)。
そこへまったくの赤の他人が加わった場合、その人が「別の目的」で利用を考えている、あるいは「投資目的で持分を買った」など、元々の共有者とは違う考えを持っている可能性が高く、合意形成が難しくなる恐れがあります。
2. 空き家管理や費用負担でトラブルに
例えば、長年使われていない家を相続して共有していた場合、維持管理費や固定資産税を誰がどのように負担するかが問題になります。
第三者が共有者として入ってきた場合、その人は法的に「共有者の一人」として一部費用を負担する義務を負います。しかし、実際には「全然払ってくれない」「コミュニケーションが取れない」といった形で費用分担が不明確になるリスクがあります。
3. 使用・収益の権利が複雑化
共有不動産を賃貸に出す、あるいは何か別の形で活用しようと思ったとき、新しい共有者の同意が必要になるケースがあります。もし投資目的で入ってきた共有者が「もっと高い家賃で貸すべきだ」と主張したり、「私の許可なしに賃貸は認めない」というスタンスを取ったりすれば、利活用の方向性で衝突が起こる可能性があるでしょう。
4. 最終的に共有物分割訴訟に発展するリスク
新しく入ってきた共有者が自身の利益を最大化したいと考え、他の共有者とまったく話が合わない場合、共有物分割訴訟を起こして不動産を強制的に分割(現物分割、代償分割、競売など)されてしまう恐れもあります。
競売となると物件が相場より安く処分されることが多く、元々の共有者全員が大きな損をする展開も考えられます。
なぜ第三者は持分だけを買うのか?
普通に考えると、共有持分だけを買っても不動産全体を自由に使えるわけではありません。それなのに、なぜ知らない第三者はそんな持分に興味を示すのでしょうか?
1. 相場より安く買えるから
共有持分は通常、単独所有不動産に比べて安値で取引されることが多いです。これを利用して、「持分を安く買って、他の共有者に買い取らせる」ことを目的とする投資家(いわゆる共有持分買取業者)も存在します。
もし他の共有者が自分の権利を守るために買い取りを申し出れば、その差額で利益を得られるのです。
2. 競売や分割を見据えている
新しく入ってきた共有者が、最初から共有物分割訴訟を起こし、競売や代償分割に持ち込んで利益を得ようと考えている場合もあります。
競売をかければ他の共有者が嫌がって和解金を払う可能性がある、あるいは競売の機会を利用して不動産全体を安く入手することを狙う、といった思惑があるのです。
リスクにどう対処すればいい?具体的な方策
「突然、赤の他人が共有者に…」という事態を防ぐため、または起こった後に大きなトラブルを避けるためには、以下のような対処法が考えられます。
1. 事前に共有者同士のルールを決めておく
相続や共同購入で不動産を共有する場合は、共有者同士であらかじめ財産分与や買取に関する合意(「共有物分割禁止の特約」など)を取り決めておくのが望ましいでしょう。
ただし、この特約にも期限や法的制限があるため、必ずしも永久に転売を防げるわけではありません。また、完全に売却を禁止するのは難しいケースが多いです。
2. 他の共有者が優先的に買い取る
知らない第三者に持分を売られる前に、他の共有者が買い取る選択肢を検討しましょう。
持分の買取価格を巡っては交渉が必要ですが、専門家(不動産鑑定士など)の査定結果を参考に、公平な金額で話を進めるとスムーズかもしれません。こうすることで、新たな外部の共有者が参入してくるリスクを減らせます。
3. 第三者が入ってきた後は協議を重視
もし親族が持分を売ってしまい、すでに第三者が共有者として参入したのであれば、まずは協議を重視してトラブルを回避する姿勢が大事です。
一方的に対立をあおるのではなく、「この不動産をどう活用していくか」「費用負担はどうするか」を冷静に話し合うことで、両者にとって納得できる落としどころを探しましょう。
4. 弁護士や不動産の専門家を活用
共有者同士でまとまらない場合、弁護士や不動産鑑定士、司法書士といった専門家の意見を取り入れるとよいでしょう。
・ 弁護士:共有物分割請求や競売などの法的手続きに強い
・ 不動産鑑定士:正確な不動産評価により買取価格や分割案の裏付けを提供
・ 司法書士:登記変更や持分移転などの手続きを円滑に進める
こうした専門家のサポートがあると、感情的な対立を回避しやすくなります。
突然の持分売却を防ぐことはできる?
結論から言えば、完全には防げないのが現状です。民法上、各共有者は自分の持分を自由に処分できる権利を有しています。ただし、以下の方法で“ある程度”の抑止力を持たせることが可能です。
共有物分割禁止の特約を設定
共有者全員が「◯年間は共有状態を解消しない」という契約を結ぶことができます。これにより、その期間中は勝手に持分を売却することを制限できますが、最長で20年しか効力がありません。また、事情が変われば契約自体を共有者全員の合意で解除することも考えられます。
優先交渉権を取り決める
契約で「持分を第三者に売る前に、他の共有者に買い取りの機会を与える」などの優先交渉条項を定めておくと、第三者への売却が行われる前に対処できる可能性があります。
ただし、これらもあくまで共有者全員の合意が必要であり、完全に売却を阻止できるわけではありません。
まとめ
「親族が共有持分だけを売却して、知らない第三者が共有者としてやってきた…」という事態は、法的には特に違法性がなく、よくあるトラブルの一つです。
新しく参入した共有者は、何らかの目的や思惑を持って持分を取得しているため、他の共有者との利害調整が一段と難しくなるリスクがあります。特に、建物や土地の使用や管理費用の分担、将来的な売却・再建築などを巡って意見が対立しやすくなるでしょう。
万が一、こうした状況に直面したときは、感情的にならずに現実的な対応をとることが大切です。具体的には:
- まずは第三者と協議し、お互いの考えを確認する
- 場合によっては弁護士や不動産鑑定士の助けを得る
- もし協議がまとまらなければ、共有物分割請求の可能性を検討
元々の共有者が困らないようにするためには、事前に共有者同士のルールづくり(買取・売却に関する優先交渉権など)をしておくことも有効ですが、長期的には問題を避けられない場合もあります。
「気づいたら知らない人が持分を持っていた」というリスクを下げるためにも、共有者間での情報共有や、必要に応じた買取交渉、専門家への相談を早めに行いましょう。
お問い合わせ
共有持分、共有名義、再建築不可、底地などの訳あり物件でお困りではありませんか?私たちは、どんなに複雑なケースでも迅速かつ丁寧に対応する専門チームを備えています。24時間365日、お気軽にご相談ください。
【24時間電話相談OK】TEL:03-6823-2420
【問い合わせフォーム】 https://sakk.jp/contact/
訳あり物件の可能性を見出し、解決へ導くプロフェッショナルチームがサポートします。お気軽にお問い合わせください!