【参照】国土交通省「不動産の『引取サービス』について」
URL:https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/content/001877031.pdf
所有者が「お金を払って引き取ってもらう」新しい不動産取引
国土交通省は、所有者が金銭(引取料等)を支払い、事業者が不動産を引き取る「不動産引取サービス」の実態調査を行いました。
空き家や訳あり不動産を「早く手放したい」「管理負担から解放されたい」というニーズに応じた新しい取引形態で、通常の売買とは逆方向の資金の流れが特徴です。
59社がサービス提供、約3分の2が宅建業者 本社は東京集中
調査によると、インターネット上で引取サービスを掲げる事業者は59社で、そのうち38社(約64%)が宅建業免許を保有。
本社所在地は東京都が約半数を占め、神奈川・千葉・大阪・愛知・福岡・北海道などにも分布しています。
「訳あり不動産」「空き家引き取り」といったキーワードで検索できる事業者が増え、ここ数年で市場規模が広がりつつあります。
国交省が整理する3つの課題①──取引の安全性
第一の論点は「取引の安全性」です。
・所有者が引取料を支払ったのに、事業者が所有権移転登記を行わない
・費用や条件が不透明なまま契約させられる
といったリスクが懸念されています。
宅建業法などの規制が及ばない場合も多く、契約内容の確認と登記手続きの確実性が重要とされています。
国交省が整理する3つの課題②──適正価格での売却機会を失わないか
第二の論点は「不動産の適正価格での取引機会」です。
引取サービスに持ち込まれる物件は、市場で売りにくい空き家・再建築不可・地方の遊休地などが多いと想定されます。
一方で、本来なら通常の売買でより高く売却できる不動産まで、安易に引取サービスへ回されてしまい、適正な市場価格での売却機会が失われる懸念も指摘されています。
国交省が整理する3つの課題③──引取後の管理不全・所有者不明化リスク
第三の論点は「引取後の不動産管理」です。
事業者が引き取った後、長期間放置すれば、管理不全土地や将来の所有者不明土地となり、地域の空き家問題をむしろ悪化させるおそれがあります。
土地基本法は、事業者に対しても「適正な利用・管理」を求めており、引取後の方針と責任が問われます。
現時点で大きな被害報告はないが、規制のグレーゾーンに
国交省は「通常の売買と同様に所有権移転と金銭授受が円滑に行われる限り特段の問題はない」としつつも、宅建業法等の規制が及ばないケースが多い点を踏まえ、注意深いモニタリングが必要としています。
現時点で深刻な被害の急増は報告されていませんが、今後の市場拡大に伴うトラブル発生が懸念されています。
任意団体「不動産有料引取業協議会」による自主規制の動き
引取サービスの一部事業者は、任意団体「不動産有料引取業協議会」を設立し、自主規制のルールを公表しています。
・費用や条件を契約前に明示・説明すること
・契約不適合責任の免責内容を明確にすること
・引取料の支払いは所有権移転登記申請以降とし、原則前金を受け取らないこと
・宅地建物を対象とする場合は宅建業免許を保有すること
・引取後の管理・売却方針をホームページ等で説明すること
・苦情に適切に対応し、連絡先や事務所実態を公開すること
といった基準が示され、業界としての信用向上を図っています。
引取サービスの実績は増加傾向、再販される物件も一定数
協議会加盟社など一部の事業者では、令和3年数件規模だった引取件数が、令和5~6年には数百件規模に増加した事例も報告されています。
引取後、リフォームや権利整理を経て再販されるケースも一定程度あり、「引き取って終わり」ではなく市場再流通に活用しているパターンも見られます。
引取料の水準は、土地で1筆15万円〜、建物では40〜70万円〜、ケースによっては50万〜500万円と幅があり、物件の状態や立地によって大きく異なります。
国交省が示す「利用時の留意点」──3つのチェックポイント
国交省は、引取サービスを利用する際の留意点として、次の3点を挙げています。
①取引の安全性の確保
・代金を支払う前に、所有権移転登記が確実に行われることを確認すること
・費用・条件・免責事項など契約書の内容を十分に確認すること
②適正価格での取引機会の確保
・引取サービスだけでなく、宅建業者への査定や通常売却など、他の選択肢と必ず比較すること
③引取後の管理の確保
・事業者の管理方針・売却方針・連絡先などを事前に確認し、放置しない運営を行っているかを見極めること
株式会社SAの視点:引取サービスは「最後の一手」であり、万能ではない
株式会社SAは、共有名義・相続放棄・再建築不可・底地・立退きなど、複雑な訳あり不動産を、自社買取と「買取代行・情報提供サービス」の両輪で解決してきました。
引取サービスは、どうしても通常売却が難しい不動産を早期に手放すための選択肢として有用ですが、「安易に手放す前に、本当に他の選択肢がないか」を慎重に検討することが重要です。
適正価格の査定、権利関係の整理、複数スキームの比較を行ったうえで、それでも引取が合理的な場合にどう活用するか──。
SAは、所有者にとって最も納得感のある出口を共に設計するパートナーとして、不動産引取サービスを含むさまざまなスキームの中から最適解を提案していきます。
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