この記事の結論:相続放棄した空き家も、放棄の時に現に占有していた人には、引渡しまで保存義務が残る場合があります。一方、放棄した人すべてが一律に管理を続けるわけでもありません。行政による危険箇所の除却、財産の保存、売却する権限を分けて確認しましょう。
- 里庄町で解体されたのは危険な門。建物全体の処分が終わった報道ではありません。
- 相続放棄は、空き家だけを選んで手放す手続ではありません。
- 危険の連絡は早めに。売却・解体の契約は権限を確認してから進めます。
対象:不動産所有者・仲介担当者。本稿は判断材料を整理する一般的な解説です。個別案件の法的・税務上の判断や価格・結果を保証するものではありません。
資料確認日:2026年10月16日。ニュース解説は報道で確認できた事実と実務上の提案を分けています。

相続放棄した空き家の門を公費で解体、報道のポイント
RSK山陽放送は2026年10月15日、岡山県里庄町で、倒壊のおそれがある空き家の門が略式代執行により解体されたと報じました。法定相続人は全員相続を放棄しており、門は同年7月に特定空家等に認定されていました。
報道された解体費は約60万円です。町は今後、所有者などが新たに現れた際に請求したいとしています。また、門の撤去後も古い建物の状況を注視するとの説明がありました。この金額を空き家一棟の一般的な解体相場として使うことはできません。
このニュースから考えたいのは「相続放棄すれば行政が全部片付ける」という理解の危うさです。今回確認できたのは、町民の安全のために門の除却が行われたこと。土地や建物全体が自由に使えるようになったという話とは別です。
保存義務が残るかは「親族か」だけで決まらない
民法第940条の考え方では、相続放棄の時に相続財産を現に占有している人は、相続人または相続財産清算人へ引き渡すまで、自分の財産と同じ注意で保存する義務を負います。法務省資料は、単に被相続人の占有を観念的に承継しただけの場合との違いを説明しています。
したがって「相続放棄しても全員に永久の管理責任がある」とも、「受理された翌日から何も関係ない」とも一括りにできません。居住や使用の状況、鍵や荷物の管理、誰に何を引き渡したかなど、実際の経緯を法律専門家に伝えて確認します。鍵を持っているという一点だけで結論を出さないことも大切です。
相続放棄と売却、判断前に確認する順序
裁判所の案内では、相続放棄は原則として自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述します。調査しても判断資料が足りない場合の期間伸長の手続もあります。売れるか調べている間に期限を過ぎないよう、法律相談と価格の確認を並行して進めます。
相続放棄は、預金は受け取り、不要な空き家だけは放棄するといった選別の手続ではありません。また、財産の処分が相続の扱いに影響する場合があります。放棄を考えている段階で、自己判断で売買契約を結ぶ、家財を売る、建物を取り壊すといった行為を進めず、先に専門家へ確認してください。
査定相談では「相続放棄を検討中で、処分の可否は未確認」と明示します。価格の目安を知ることと、所有者として契約することを分ければ、相談先も前提を誤りにくくなります。
近隣への危険と、所有権の整理を別々に進める
門が傾いている、外壁が落ちそうなどの状況は、権利関係の調査が終わるまで待たず、自治体の空き家担当へ所在地と確認できた状態を伝えます。写真は安全な場所から撮り、無理に敷地や建物へ入らないでください。緊急の危険があれば、その状況に応じた緊急窓口への連絡が先です。
売却の相談では、土地と建物の名義、相続放棄の申述・受理の状況、管理している人、行政からの通知を分けて提出します。相続人全員が放棄した案件で、元の親族がそのまま売主になれるとは限りません。必要な裁判所の手続や処分権限は、法律専門家に確認する事項です。
相続放棄した空き家の確認表
| 確認する項目 | 見落としやすい点 | 実務上の確認 |
|---|---|---|
| 対象物 | 門の解体と建物全体の解体を混同 | 危険箇所と残る建物を分ける |
| 保存義務 | 相続人だった人全員に一律と考える | 放棄時の占有と引渡し状況を確認 |
| 期限 | 売却査定の結果を待ち続ける | 家庭裁判所の期限を先に確認 |
| 売却権限 | 親族だから契約できると思う | 現在の権利・処分権限を確認 |
よくある質問
相続放棄した空き家は、自治体が無料で解体しますか?
必ず解体してくれる制度ではありません。行政が危険への措置を行う場合も、対象、手続、費用の扱いは個別に確認が必要です。今回の門の解体を一般的な無料サービスとは扱えません。
相続放棄を考えていても、不動産会社に相談できますか?
価格や物件の状況について相談できます。放棄を検討していることと、契約権限が未確認であることを伝え、処分を進めてよいかは法律専門家に確認してください。
株式会社SAの視点:相談の入口で「期限・危険・権限」をそろえる
仲介担当者が相続案件を受けたら、希望価格だけでなく、判断期限と現場の危険、誰が契約できるかを確認すると、必要な相談先を選びやすくなります。売却を勧めるために相続放棄の判断を遅らせないことも重要です。
以下は相談資料の作成例であり、報道された物件の事情ではありません。
| 比較する項目 | シミュレーション(説明のための想定例) |
|---|---|
| 相談内容 | 遠方の空き家について相続放棄と売却を検討中 |
| 期限の欄 | 相続開始を知った日と、法律相談の予約日を記録 |
| 現況の欄 | 門に傾き。内部は未確認。自治体への連絡日を記録 |
| 権限の欄 | 登記名義と相続関係を調査中。契約は未着手 |
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まとめ
相続放棄した空き家の問題は、放棄の受理と危険の解消が同時に終わるとは限らない点にあります。保存義務の対象と売却権限を確認し、行政の対応を当然の前提にしないことが大切です。
相続の判断期限を守りながら、法律相談と物件の状況確認を進めましょう。
相続不動産の状況と売却の可能性を相談する
東京・神奈川・千葉・埼玉で案件を扱う仲介・買取会社の皆様へ。株式会社SAの訳あり不動産専門チームでは、物件の現況、権利関係、売主の希望を伺い、案件ごとの買取の可否や条件を確認します。
資料が不足している場合も、確認できている内容と未確認事項を分けてお知らせください。法律・税務・保険等の判断は、それぞれの専門家や契約先への確認が必要です。
