住んでいない家の告知書は、すべてを推測して埋める書類ではありません。自分で確認したこと、家族から聞いたこと、まだ分からないことを分け、売買の条件と一緒に確認します。
「雨漏りはありますか」と聞かれても、相続してから一度も家の中に入っていない。兄弟が住んでいて、屋根を直したらしいとは聞いたけれど、書類は手元にない。共有持分の売却では、こうした状況は十分に考えられます。
ここで困るのが、告知書の「あり・なし」の選択です。知らないから「なし」にしてしまうと、分からなかったという説明が伝わらなくなります。共有持分の告知書では、知っている範囲と確認できない範囲を分けることから始めましょう。
「不具合なし」と「不具合を知らない」は違う
告知書や物件状況報告書は、売主が知っている物件の状態や履歴を買主へ伝えるための資料です。国土交通省の資料でも、所有者しか分からない事項を告知書で伝え、将来の紛争を防ぐことが望ましいとされています。
家に住んでいない人は、日々の状態を確認できません。雨の日の室内を見ていないなら、雨漏りがないと断定する材料はありません。一方、以前の雨漏りを知っているのに、現在の状態を知らないという理由で過去の情報まで省くのも適切ではありません。
書式に「不明」がない場合は、備考欄の使い方を担当者へ相談します。空欄のまま放置するのではなく、「2024年以降は室内に立ち入っておらず、現在の状況は未確認」のように、時点と理由を添えると読み手が理解しやすくなります。

家族から聞いた修繕は、どう伝える?
たとえば「昨年、屋根を直したと共有者から聞いた」という情報だけがあるとします。これを「雨漏りは修理済み、問題なし」と書くと、工事内容や結果まで確認したように読めます。
伝えるなら、「共有者から2025年に屋根工事を行ったと聞いている。工事内容・施工箇所・現在の雨漏りの有無は未確認」と、情報の届き方を含めて整理します。請求書が後で見つかったら、日付と工事名を追加する。写真があるなら、撮影日と場所を添える。この積み重ねが、曖昧な安心より役立ちます。
| 避けたいまとめ方 | 分けて伝える例 | 追加で確認したい資料 |
|---|---|---|
| 住んでいないので不具合なし | 現在の室内は未確認 | 最終立入り日、写真 |
| 屋根は修理済みで安心 | 工事をしたと聞いたが詳細不明 | 見積書、請求書、工事写真 |
| 昔の雨漏りだから記載しない | 過去の発生時期と修繕の有無を記載 | 発生箇所と再発状況 |
| 隣人問題は解決済み | どの申入れにどう対応したかを記載 | やり取りや合意の資料 |
この表は記入の考え方を示す例です。実際の書式や物件によって必要な説明は変わります。家族の私的な事情を何でも書くのではなく、取引に関係する情報を整理し、個人情報を含む資料の共有範囲は担当者と確認します。
「持分だけだから建物の話は不要」ではない
持分を売る場合、家の特定の一室だけを切り取って売るわけではありません。買主は不動産の共有関係に入るため、利用状況、建物の状態、管理や費用の経緯が取引条件に関係します。
一方、持分売却と建物全体を引き渡す売買では、確認できる範囲や引渡しの内容が異なります。共有者が居住していて立入りできない物件なら、その制約を先に伝えます。告知書を完成させるためだけに、無断で室内へ入ったり、家財を動かしたりするのは避けましょう。
「確認できることを増やす」と「自分にない権限まで使う」は別です。資料の提供を依頼する、外観を適切な場所から確認する、買主へ調査の制約を伝えるなど、できる範囲を整理します。
告知書と契約書は、セットで読む
告知書は情報を伝える資料であり、それだけで売主の責任の範囲がすべて決まるわけではありません。契約の対象、合意した品質・状態、特約、当事者の立場などを併せて確認する必要があります。
「現状のまま」「免責」と書かれていれば何も説明しなくてよい、と考えるのは危険です。反対に、分からない項目があるだけで必ず売却できないわけでもありません。何を確認できず、買主がどの前提で検討するのかを書面で共有することが重要です。
売主が知っていた不具合を伝えなかった場合や、説明と実際の状況が違う場合は、特約の文言だけで処理できないことがあります。責任の判断が必要な部分は、契約前に弁護士などへ確認します。後で争うより、契約前に曖昧な一文を直す方が進めやすいこともあります。
書類が少ないときの、確認メモの作り方
紙一枚でもよいので、項目ごとに「分かること」「根拠」「未確認」「次に聞く相手」を並べてみます。これを告知書にそのまま転記するのではなく、担当者との確認用に使います。
| 項目 | 分かること | 未確認のこと | 次の確認 |
|---|---|---|---|
| 雨漏り | 2019年に天井のシミを見た | 原因・再発・現在の状態 | 写真と修繕資料を探す |
| 給排水 | 現在の使用者がいる | 水漏れや設備交換の履歴 | 共有者へ確認を依頼 |
| 修繕 | 2025年の屋根工事を家族から聞いた | 施工範囲・費用負担 | 請求書等の有無を聞く |
| 現地確認 | 外観のみ確認できる | 室内・床下・屋根裏 | 立入りの条件を相談 |
回答が戻らなかった項目は、そのまま「確認中」や「資料なし」として管理します。連絡がないことを、不具合がない証拠にしないのがポイントです。契約までに新しい情報が分かったら、以前の説明を更新し、買主へ届いたことも確認します。
よくある疑問
Q. 告知書に不明が多いと、価格が下がりますか?
A. 価格は権利関係や利用条件なども含めて決まるため、不明の数だけでは判断できません。ただし、調査できない範囲は買主の検討に関係します。推測で埋めるより、資料の有無と確認できる方法を示す方が条件を比較しやすくなります。
Q. 修理した不具合も書いた方がよいですか?
A. 過去の不具合と実施した修理を分けて整理し、書式に沿って担当者と確認しましょう。「修理した」ことと「現在問題がないと確認した」ことは違います。法的な説明義務の範囲は、事情や契約内容に応じて確認が必要です。
SAの視点:きれいな説明より、判断できる説明
買主が検討しやすいのは、「問題ないと思います」という短い説明より、いつの情報で、何が分かり、何が分からないかが見える資料です。仲介会社からの案件相談でも、この区別があると追加確認の順序を組み立てやすくなります。
共有持分の告知書は、売主が知らないことまで保証するために作るものではありません。知っている情報を正確に届け、確認できない範囲を共有し、契約の条件へつなげる。その準備が、売却を進めるうえでの安心につながります。
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決める前の疑問も、お聞かせください
価格だけでなく、書類や引渡し条件で迷う段階からご相談ください。株式会社SAの訳あり不動産専門チームが、物件の状況とご希望を伺い、共有持分・底地・空き家などの買取条件を検討します。仲介会社様からの案件のご相談も承っています。
