空き家の侵入被害が疑われるときは、まず自分の安全と警察への連絡を優先します。その後に被害を記録し、応急措置と本格的な修理を分けて検討すると、売却を含む次の判断がしやすくなります。
久しぶりに実家を見に行ったら、窓ガラスが割れている。誰かに入られたのか、風で物が当たったのかも分からない。こんなとき、「とにかく中を確認して、散らかった物を片付けよう」と考えるかもしれません。
ただ、最初にすることは掃除ではありません。空き家の侵入被害が疑われるときは、安全の確保、警察への連絡、記録、応急措置という順番で考えます。その順番を守ることは、後から修理や売却を相談するときにも役立ちます。
犬山市の報道から考える、被害に気づいた後の動き
メ〜テレは2026年10月28日、愛知県犬山市の空き家に侵入し、金品を盗もうとした疑いなどで2人が逮捕されたと報じました。報道では、窓ガラスを割って侵入したとされ、警察は認否を明らかにしていないとしています。
同じ報道によると、愛知県では2026年に入り、空き家を狙った窃盗事件が約580件発生しており、警察は空き家に貴重品を置かないよう呼びかけています。この数字だけで個々の家の危険度が分かるわけではありませんが、「誰も住んでいないから盗まれる物もない」とは限らないことが分かります。
今回の事件の詳しい被害状況や所有者の対応は、読めた報道の範囲では確認できません。ここからは、同じように空き家の異変を見つけた所有者が、何を確認するとよいかを整理します。

中に人がいるかもしれないなら、自分で確かめない
物音がする、玄関が開いている、人が出入りしている。そんな状況なら、犯人を見つけようとして入るのは避けてください。安全な場所へ離れ、緊急の対応が必要なら110番です。緊急ではない相談は、最寄りの警察署や警察相談専用電話「#9110」が案内されています。
連絡するときは、家の住所、自分と物件との関係、今見えている異変、最後に異常がなかった時期を伝えます。分からないことは「分からない」で構いません。「何か盗まれたはず」と推測で埋めるより、「窓が割れ、外から室内の引き出しが開いているのが見える」と、見た事実を伝える方が状況を共有しやすくなります。
割れたガラス、傷んだ床、倒れかけた家具も危険です。侵入した人がいないと分かっても、直ちに室内が安全になるわけではありません。警察が確認する前に窓や家財に触れると、現場の状況が変わってしまいます。室内に入ってよいか、片付けを始めてよいかも含め、警察の案内に従いましょう。
片付ける前に「何を残すか」を決める
被害の確認が済んだ後も、全部を一度に捨てると、後から説明する材料がなくなることがあります。写真は見栄えよく撮るためのものではなく、いつ、どの場所が、どのような状態だったかを残すためのものです。
たとえば窓なら、警察の案内を確認したうえで、家のどの面にあるか分かる全体の写真と、破損部分の写真を両方残します。修理後の写真しかなければ、元の状態を説明しにくくなります。鍵や建具を交換したら、工事日、施工箇所、請求書などを一緒に保管すると、管理の経過がつながります。
保険に加入している場合は、補償の対象、必要な資料、修理前の連絡が必要かを契約先へ確認します。空き家の使用状況や契約内容によって扱いが異なるため、「窓が割られたなら必ず保険が出る」と決めつけて工事を発注しないことが大切です。
| 残す情報 | 書き方の例 | 避けたい書き方 |
|---|---|---|
| 発見した事実 | ○月○日、東側の窓の破損を外から確認 | 泥棒が全部壊した |
| 確認できない範囲 | 室内は未確認、家財の不足は調査中 | 盗まれた物はない |
| 対応の経過 | 警察へ連絡した日、修理会社へ相談した日 | すべて対応済み |
| 修理の内容 | 窓ガラスと鍵を交換、他の箇所は未点検 | 家全体を直した |
応急措置と、売るためのリフォームを一緒にしない
雨が入る窓を塞ぐことと、室内を全面的に改装することは、目的が違います。前者は被害の拡大や再侵入を防ぐための対応。後者は、今後どう使うか、誰に売るかを考えたうえで判断する費用です。
たとえば売却も考えている家で、窓の応急措置、家財処分、内装工事を一括で頼むとします。すっきりはしますが、買主が建物を使うのか、解体を前提とするのかで、内装工事の意味は変わります。工事費をかけた分だけ売却代金が増えるとは限りません。
先に必要な安全対策を切り分け、残りは「現状で引き渡す場合」と「片付け・修理をして引き渡す場合」の条件を比べます。見積書も、応急措置、残置物処分、修理という項目に分かれていれば、どこまで依頼するか判断しやすくなります。
| 対応 | 先に確認すること | 売却相談で聞くこと |
|---|---|---|
| 危険箇所の応急措置 | 現場確認と作業の安全性 | 引渡しまで誰が維持するか |
| 残置物の処分 | 所有者、必要書類、残す物 | 残した状態で相談できるか |
| 建具や窓の修理 | 必要範囲と見積もり | 未修理の場合と条件がどう違うか |
| 内装の全面改装 | 建物を今後利用する見通し | 費用をかける前後の条件差 |
売却時は「事件があった」だけで終わらせない
買主へ伝える際は、出来事、現在の状態、実施した対策を分けます。「侵入被害があった」という一言だけでは、どこが壊れ、何が直り、何がまだ分からないかが伝わりません。
逆に「鍵を交換したので問題はありません」と言い切ると、他の不具合まで確認したように聞こえます。「窓ガラスの破損を確認し、窓と玄関の鍵を交換した。室内設備の動作は未確認」のように、確認範囲を明確にする方が、具体的な条件の話へ進めます。どこまで告知書や契約書に記載するかは、被害や修理の状況も踏まえ、不動産会社の担当者と資料を見ながら整理しましょう。
相続した家なら、亡くなった方の重要書類や共有者の所有物が残っていることもあります。処分の権限がはっきりしない物は、急いで廃棄しないで確認します。防犯上の対応と、財産の整理は並行して進めても、判断を混ぜないことが大切です。
SAの視点:修理代だけでなく、管理を続ける負担も見る
空き家の負担は、工事費だけではありません。遠方から確認に行く交通費、仕事を休む時間、次に異変があったときの連絡体制も関係します。売るかどうかを考える際は、「今回直せば終わりか」「その後も管理を続けられるか」を一緒に考えます。
売却の相談には、完璧な資料がそろっていなくても、現状の写真、分かる範囲の被害と修理の記録、名義、家財の状況があると話を具体化しやすくなります。未確認事項を隠さず共有することが、引渡し条件の食い違いを減らす出発点です。
Q. 被害があった空き家は、修理しないと売却相談できませんか?
A. 修理前でも相談はできます。必要な安全対策は先に検討しつつ、買主が求める状態と売主が負担する作業を確認します。先に全面改修を決めるより、現状と修理後の条件を比較する方が判断しやすくなります。
Q. 被害額が分からないまま警察へ連絡してもよいですか?
A. まずは見つけた異変を伝えてください。自分で室内を調べて金額を確定することを優先する必要はありません。緊急なら110番、緊急でない相談は警察の相談窓口へ連絡します。
空き家に異変があったとき、急いで元通りにしようとするのは自然な気持ちです。それでも、安全、記録、応急措置、その後の使い方という順番を守ることで、余分な出費や説明の行き違いを防ぎやすくなります。
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