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COLUMN

コラム 空き家買取

2026年10月27日

古民家活用は改修から始めない|築170年の再生報道で考える費用と出口

この記事の要点

古民家活用は、築年数だけで判断できません。使う人、必要な工事、費用を負担する人を先に整理すると、所有者が自分で改修・開業する以外の選択肢も見えてきます。

「古い家だから、壊すしかない」。そう思っていた実家に、別の使い道が見つかることがあります。ただ、再生事例を見てすぐに改修の見積もりを取ると、使う人が決まらないまま費用だけが膨らむこともあります。

古民家活用で最初に考えたいのは、「何に生まれ変わらせるか」より「誰が、どんな条件なら使いたいか」です。2026年10月26日の再生報道を手がかりに、所有者が無理を抱え込まない進め方を考えます。

築170年の古民家が商業施設に。注目したいのは立地と使い手

不動産流通研究所の報道によると、東急、住友林業、再生建築研究所は、新綱島駅前の商業施設「新綱島MICCA」を10月28日に開業する予定です。築170年の古民家を改修した建物と、新築の木造商業棟を組み合わせています。古民家部分にはベーカリービストロが入ります。

古い柱や梁を生かしながら、基礎、耐震、断熱などにも手を入れる計画です。新綱島駅から徒歩1分という立地も、この事例を読むうえで外せません。「古い建物を残した」という見た目の話だけでなく、利用目的と建物の性能を組み合わせた再生といえます。

一方、この計画の規模や条件を、そのまま郊外の実家や交通の便が異なる物件に当てはめることはできません。参考になるのは、改修の豪華さよりも、使い手と工事内容を結び付けている点です。

古民家活用で先に確かめたい四つの条件

例えば、雰囲気のよい家をカフェにしたいと考えたとします。客席をつくる工事の前に、来店する人はいるか、車を止められるか、飲食店として必要な設備を入れられるかを確かめたいところです。住宅として困らなかったことが、店舗では費用や運営の壁になります。

古民家活用で確認する使う人、物件の条件、工事と費用、続け方と出口の図解
古民家活用は、使う人から出口までを順番に確認します。

この順番は、修繕を後回しにするという意味ではありません。雨漏りや倒壊のおそれなど、建物を守るための対応は別に進めます。そのうえで、事業用の大きな投資は「誰が使うか」を確かめてから決めると、工事のやり直しを減らしやすくなります。

第一に、需要です。周辺に観光客が多いのか、地域の人が通う場所なのかで、向く用途は変わります。近隣で似た店が営業しているだけで判断せず、候補となる事業者に、面積、賃料、駐車場、引渡し状態の希望を聞くことが出発点です。

第二に、使える条件です。登記や共有者の有無、道路との関係、増築の履歴、上下水道の状況などを確認します。国土交通省は、市街化調整区域の既存建物について一定の用途変更を進める制度運用を示していますが、全国の古民家が自由に店舗へ変えられるという意味ではありません。該当する地域では、計画段階で自治体の担当窓口に用途と条件を確認します。

第三に、工事の範囲です。「古さを残す工事」と「安全や営業のために必要な工事」を分けると、優先順位が見えます。梁を見せる意匠より先に、構造、雨仕舞い、設備容量などの課題が出る場合もあります。見積もりは総額だけでなく、調査で増える可能性がある項目も確認しましょう。

第四に、撤退時の条件です。開業後に借主が退去したとき、内装を残すのか、撤去するのか。所有者が負担した工事を短期間で使わなくなったらどうするのか。うまくいった場合だけで契約を組まないことが大切です。

古民家活用の三つの方法。自分で経営・貸す・売るで負担はどう違う?

古民家活用という言葉から、所有者自身が店を始める姿を思い浮かべるかもしれません。しかし、不動産を持つことと、店舗や宿泊施設を経営することは別の仕事です。運営を続けられる人がいるかどうかも含めて比べてみます。

所有者の役割で比べる三つの選択肢
選択肢 主に引き受ける負担 先に決めたいこと
自分で改修・運営する 工事費、運転資金、集客、日常業務 売上が伸びない期間を支えられるか
事業者に貸す 建物管理、契約で定める修繕、空室時の負担 工事の負担区分、期間、退去時の扱い
現状を伝えて売却する 売却までの管理、条件の整理 建物や残置物をどの状態で引き渡すか

貸す場合も、工事費をすべて借主が出すとは限りません。逆に、所有者が全面改修しなければ借り手を探せないとも限りません。雨漏りは所有者、内装は借主などと分ける場合には、修繕箇所、工事の承認、設備の所有者を契約で明確にします。

売却を選ぶ場合は、「活用できないから売る」と考える必要はありません。資金や運営体制のある買主へ引き継ぐことも、一つの出口です。ただし、買主が取得後に建物を残すとは限らないため、保存への希望があるなら価格と併せて条件を伝えます。

家賃10万円でも、手元に10万円残るわけではない

比較のため、月額賃料10万円、年間収入120万円の想定例で考えます。ここから管理や税金、修繕の備えなどとして年間30万円を見込むと、差額は90万円です。さらに所有者が改修費900万円を負担するなら、単純に割り算した回収期間は10年になります。

この10年には、空室、追加工事、借入利息、売却時の費用などを織り込んでいません。つまり「10年で必ず回収できる」という数字ではなく、契約期間や資金負担を考えるための最初の物差しです。

同じ改修費でも収入の前提で見え方が変わる(説明用の想定)
年間賃料収入 年間支出の想定 差額 900万円を差額で割った年数
120万円 30万円 90万円 10年
96万円 30万円 66万円 約13.6年
72万円 30万円 42万円 約21.4年

この例では賃料収入以外の条件を固定しています。実際には利用状況によって支出も変わります。それでも、満額の家賃だけを見るより、収入が下がった場合に持ち続けられるかを話し合いやすくなります。見積もりを取るときは、家賃の希望額と工事費を別々に集めず、一枚の表に並べるのがおすすめです。

「直してから売るべき?」など、所有者が迷いやすいこと

Q. 売却前に水回りや内装を新しくした方が高く売れますか?

A. 必ずしも工事費以上に売却価格が上がるとは限りません。住宅にしたい買主と店舗にしたい買主では必要な設備も違います。まず現状での購入条件と、改修した場合の見込みを分けて確認すると、先行投資を判断しやすくなります。

Q. 契約書や図面が見つからなくても相談できますか?

A. 最初から一式をそろえる必要はありません。所在地、所有者が分かる資料、建物の写真、増改築について分かることを整理してください。資料がない項目を明確にすると、登記の確認や現地調査など、次に調べることを決めやすくなります。

Q. 建物を残したいけれど、自分では経営できません。

A. 運営できる事業者へ貸す方法や、保存・活用を検討する買主への売却が候補になります。ただし、残す範囲や費用負担によって条件は変わります。「絶対に残したい部分」と「相談できる部分」を分けて伝えると、話を進めやすくなります。

SAの視点:きれいにする前に、負担を引き継げる形にする

古民家を前にすると、残すか壊すかの二択になりがちです。しかし取引の場では、使い手、工事、資金、管理を誰が引き受けるかによって選択肢が変わります。

株式会社SAの訳あり不動産専門チームへの相談でも、「修繕してからでないと相談できない」と考える必要はありません。共有者がいる、遠方で管理できない、図面がないといった事情も、判断の前提になります。仲介会社様は、売主様の希望と、未確認の事項を分けて共有いただくと、確認すべき条件を整理しやすくなります。

古民家活用の第一歩は、大きな改修の決断ではありません。誰が使い、誰が費用を負担し、続かなかったときにどうするか。この三つを見える形にしてから、物件に合う出口を選びましょう。

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